悪い予感はよく当たる/破壊(1) [問題行動]
U一郎とO次郎は、小さい頃からずっと、
毎日、モノを壊して生きてきた。
そのことを、療育などで相談すると、
だいたい、こんな回答がくる。
1「いつか終わるから、それまで好きにさせてみなさい。」
2「壊していいものを、毎日決めて、与えなさい。」
3「壊されて困るものは、全部しまって鍵かけて。」
4「くせがつくと困るから、部屋の中にモノを出さないで」
5「どうしたら、いいでしょうねぇ。むずかしいですね。」
つまり、相談する相手によって、回答は異なる。
4と5の回答は、話にならなかったので、
1~3の中で、どれを選ぼうか、考えたことがある。
初めは、教育的な気持ちもあって、
2の回答を、家で実践してみた。
チラシや不要の箱などを入れた段ボール箱を用意する。
「これは、壊していいよ。でも、他は壊さないよ。」
と繰り返し教える。
そして、壊した物を捨てるための箱を用意する。
「壊したら、こっちに入れるよ。」
と、子供の手をとって、捨てる練習をする。
確かに、はじめた日は、うまくいった。
でも、壊しても良いと用意されたものでは、
刺激が足りず、つまらなかったのだろう。
次の日には、教わったとおりにしないばかりか
2つの箱も中身も、メチャクチャに壊されていた。
そこで、2の回答の「鍵をかける」「隠す」を
やってみようかと考えてみた。
でも、きっと、U一郎やO次郎は、
鍵をかけてまで隠されたモノものがある、とわかると、
「どうしても見たい!開けてみたい!」
となり、全力で破壊活動にとりかかるだろう。
そのため、私にとって一番被害が少ない方法として、
ずっと、1の回答を選んで過ごしてきたのだった。
ところが、こういう私の選択を
「子供たちの問題行動を放置している」
と考えて、それを問題視する療育の先生もいる。
その療育の先生に、強く強く強ーーくさとされ、
本当は、あまり気乗りはしなかったが、やむなく、
家のどこかに鍵をかけて、モノを隠すことにした。
「冷蔵庫に鍵をかけているお家も、結構ありますよ」
とも言われ、こんな鍵があることも教えてもらった。
でも、これを試してみるのはやめた。
冷蔵庫を壊されては、かなわない。
「こんないい鍵が、売られているのになぁ」と
私の家では、使うこともできないことを
ちょっとカナシク思った。