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悪い予感はよく当たる/破壊(3) [問題行動]

子供達が、毎日、家のモノを壊すことで、

日々の生活も、破壊されてしまうため、

引き出しに鍵をかけてみることになった。





療育で紹介されたこの鍵は、後付けできて、

しかも、鍵がついていることもわからない。


もちろん、本当に大事なものは、

子供たちに絶対わからないところに

厳重に隠してある。


でもそれは、普段、簡単には出せない。


だから、今回、この鍵がうまくいったら、

家中の引き出しや開き戸などに、

少しずつ取り付けていく予定。


そして、U一郎やO次郎に

モノを壊されることを減らし

後片付けの手間を減らそうというのが、

療育の先生の考えだ。


その後、鍵を取り付けて一週間経っても、

鍵をつけた引き出しには、何も起きなかったし

子供たちも、いつも通り、別のモノを壊していた。


引き出しが開かないことに、気が付かなかったのだろう。


鍵を付けた引き出しの中には、

あまり使わない物が入っていたので、

カードキーで解錠することも、しなかった。


けれど、取り付けて、10日くらいに入った頃

それは起きた。


「ァギャァァー、キィィー」

バァンバンッ、ドカッドカッ、ドォッ!


驚いて、夕食の支度も放り出し、

急いで音のする方へ行った。


そこには、顔から耳まで真っ赤になり、

歯をむき出しにして絶叫するU一郎がいた。

開かない引き出しに、怒り狂って


引き出しの下の方を、足で蹴飛ばしながら

指で、引き出しを開けようと、かきむしっていた。


U一郎の指や足の肌は赤くなり、

指の爪は、少し傷ついたように見えた。


「ごめんね、U一郎。」

後ろからそっと抱きしめて、耳にささやいた、

「この引き出し、壊れちゃったの。開かないの」

「今度、修理するから。ね、まってて。」

何度も、何度も、言い聞かせた。


「アァァアーッ!イヤッ、イヤァッ!アギャァー!」

U一郎は、耳が痛くなるほどの大声で叫び

全身をばたつかせながら、床を転げ回った。

そして、ぶつかった壁や家具を、思い切り蹴飛ばした。


こういう時、何か言ったり無理に介入すると、

だいたい、興奮が激しくなってしまう。

そこで、動かせる家具は、部屋からどかして、

U一郎のケガやモノの破壊を、減らす努力だけした。


「やっぱりね、あぁぁ。」


私は、部屋のすみっこで、ため息をつき、

ひざに顔を埋めるように座り込んで、

U一郎が落ち着くのを、じっと待った。


U一郎は、しばらく暴れていたあと、

徐々に落ち着きを取り戻して、叫ぶのをやめると、

花時計の秒針のように、床をクルクル回り出した。


「もうすぐ、ニュートラルに戻るかな」

そう思った時、何かの臭いを感じた。


「ママー、何かこげているんじゃない?」

部屋の反対側に顔だけ出したO次郎は、

好奇心にあふれてワクワクした光る目つきで

うれしそうに、こちらを覗きこんで言った。


跳ね起きて、キッチンに走ると、

お鍋の中の煮物は、すっかり水分がなくなり、

なべ底は、ねっとりと焦げ付いていた。


「あぁ・・。やってしまった。」


泣き出しそうになりながら、

お鍋の中の焦げた食材を、処分した後

お鍋を、いつ、どうやって、きれいにしようかと

もう動かない頭で のろのろ考えていた時、

ふと、横に気配を感じた。


楽しそうな顔のO次郎が、はずんだ声で、

ゴミ袋に入れた焦げた食材を見て言った。

「ねー、それ、今日のご飯なの?どうしたの?」


「あっちにいってなさい!宿題はしたの?!」

思わず大声で叫んでしまった。



    



  




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